犬を飼いたい迎えたいと考えた時に、迎える方法はいくつかあります。たとえば、ペットショップやブリーダーさんから購入する、知り合いの家で産まれた子犬をもらう、そして保護犬の里親になる。
「保護犬を飼うのは難しい」と言われることが多いのですが、実際のところはどうなのでしょうか。実は、私自身が保護犬を迎え現在一緒に暮らしています。
保護犬を飼うことの難しさや、保護犬をむかえるメリットについて実体験も踏まえて紹介します。
目次 -INDEX-
保護犬になる背景|保護犬とはどんな犬のこと?
最近、テレビや芸能人などが保護犬について紹介することも増え、保護犬について知る機会が増えてきました。そもそも保護犬とはどういった犬のことを指すのでしょうか。
保護犬とは一般的に、飼い主がいない、お家がない犬や、さまざまな理由で飼い主ではない人に一時保護されている犬のことを言います。では、どうして保護犬になってしまうのでしょうか。
そもそも保護犬の飼育が難しいといわれる大きな理由に、「保護犬になる背景」が大きく関係していると言われています。まず、保護犬になってしまう背景を理解しましょう。
飼い主が飼育放棄した
保健所には、飼い主が飼育を放棄した犬が日々持ち込まれています。飼育を放棄する、飼育できなくなる理由にはさまざまあります。
- 転居先がペット不可のため飼育できる環境でない
- 子どもが産まれる。また、子どもが犬や猫のアレルギーをもっていた
- 飼い主の死亡によるもの
- トラブルを起こしてしまった
- しつけができなかった、思った犬ではなかった など
いずれも、飼い主の無責任かつ勝手な理由によるものが多く、犬や猫たちが飼育放棄され結果として保護犬や保護猫となってしまうのです。
ブリーダーが劣悪な環境で飼育していて保護された
「パピーミル」という言葉を聞いたことはないでしょうか?パピーミルとは、簡単にいうと利益のために劣悪な環境で犬をモノのように扱い、繁殖させる悪質ブリーダーのことを言います。
小さな檻の中で、限界を迎えているにも関わらず度重なる繁殖をさせるブリーダーや、満足な食事を与えることもなく環境も劣悪な状態で飼育しているブリーダーもいます。劣悪なブリーダーのもと保護された犬は、散歩もしたことがなく外に出たことがない犬や、病気のまま放置されている犬、吠えてうるさいからという理由で声帯を切られたような犬もいます。
多頭崩壊から保護された
去勢や避妊手術をしていなかったペットである犬同士が、飼い主がコントロールしきれていないままどんどん子ども産んでしまい、飼育しきれなくなることあります。
ペットの多頭崩壊はニュースでも取り上げられることも多いのですが、たとえば野良犬を保護したつもりが、去勢・避妊していなかった結果、増えすぎて飼育できなくなり、自治体や愛護団体が介入する時には既に50匹以上に増えていた。といったようなケースもあります。
「多頭崩壊=飼育できていない」ということになるので、多頭崩壊で保護された犬も悪質なブリーダーから保護された犬同様、散歩に行ったことがない、まともな食事を与えてもらっていない、病気をもっているなどの状態の犬が多いと言われています。
野犬として保護された
令和になり野良犬を見かけることは少なくなったようですが、保護犬情報を閲覧していると田舎といわれるような、地方ではまだまだ野犬として保護される犬もたくさんいるようです。
野犬の場合は、人間に慣れていないケースが多いため触れようとしたら噛みつこうとする、警戒して逃げていくなどといった犬が多いと言われています。
保護犬を飼う難しさ|なぜ保護犬を飼うのは難しいと言われるのか
保護犬になる背景を理解すると、保護犬の性格が少しわかってくるかもしれません。もちろん、犬ごとに性格や特徴が異なるため一概には言えませんが、保護犬を飼うのが難しいと言われる理由は保護された背景により形成された性格も大きく関係しているでしょう。
保護犬を飼うのが難しい理由①臆病な犬が多い
保護された犬の中には虐待されている犬も多くいます。また、繁殖のためにケージから出してもらえず散歩どころか外にでたこともないような犬もいます。辛い過去があるからこそ臆病になってしまうのです。
わが家で迎えた保護犬も散歩にいったことがなかったからなのか、風の音が怖い、他の犬が怖い、男性が怖いといったような面もみられることがありました。
保護犬を飼うのが難しい理由②心を閉ざしている犬が多い
犬だけではありません、過去に辛い経験があった場合は自分の心と身体を守るために心を閉ざしてしまいます。特に虐待された、大好きだった飼い主に捨てられたといった辛い経験をしている保護犬たちは、心を閉ざして信頼関係をなかなか築けないケースが多いでしょう。
保護団体さんに保護された犬でも、ケージの中からでてくるまで数ヶ月、場合によっては何年もかかったような犬もいます。
保護犬を飼うのが難しい理由③警戒心が強い犬が多い
保健所につれていかれる、その他捕まえられるといったような捕獲の瞬間が怖い・トラウマになる犬が多いと言われています。結果、警戒心もつよくなります。
飼い主に一度裏切られたような犬、虐待され続け人間を信じることができない犬はどうしても警戒心が強くなります。警戒心が強いということは、心をなかなか飼い主に開いてくれないので、信頼関係を築くことが難しいでしょう。
犬種独特の特徴ではなく、保護された背景により警戒心が強くなってしまった犬の場合は、飼育するのが難しいと言われています。
保護犬を飼うのが難しい理由④成犬の場合しつけが入りにくい
保護犬といってもその種類はさまざまです。たとえば、子犬の場合もありますし、成犬の場合もあります。また、純血種もいれば雑種もいます。
成犬の状態で迎える場合は、子犬に比べて適応能力や吸収能力が下がるためしつけが入りにくいでしょう。結果として、トイレを覚えてくれない、無駄吠えが多いなど必要最低限のしつけが入らないケースも多いのです。
保護犬を迎えたい場合は?
保護犬を迎えたいと思った時どのような方法があるのでしょうか。わが家が保護犬を迎えるときは里親募集サイトを利用し、保護団体から迎えました。他にも保護犬を迎える方法はありますので、紹介していきます。
保護犬を迎える方法
- 動物愛護センターや保健所から迎える
- 保護団体さんから迎える
- 里親募集サイトを利用する
- 譲渡会イベントなどに参加する
自治体が運営する動物愛護センターや、保健所では野良として捕獲した犬や猫、飼い主から持ち込まれた犬や猫などの譲渡情報を提示している場合があります。また、譲渡会をおこなっている保健所や動物愛護センターもあります。
保護団体さんから迎えるという方法もあります。保護団体さんは、保健所で殺処分される予定の犬や多頭崩壊からレスキューした犬などを一時的に保護し、次の家族を探しています。また、「ペットのおうち」など里親募集サイトから迎えることもできます。里親募集サイトでは個人や保護団体さんが里親を探しています。
カインズホームなどホームセンターなどで保護団体主体で、譲渡会も実施されています。いきなり保護犬を迎えるのは躊躇する人も多いと思いますが、保護犬について気になる方は譲渡会などに参加してみるのも良いでしょう。
保護犬を迎える場合の費用
保護犬といっても譲渡費用は原則無料ではありません。費用は数万円〜10万円程度必要なケースもあります。わが家が保護犬を保護団体さんから迎える際は、約6万円ほどかかりました。
譲渡費用の内訳はその保護犬にかかった去勢・避妊費用や、ワクチン費用、検査費用、ノミ・マダニ・フィラリアの投薬費用、また病気をもっている犬の場合は病院代などがかかる場合もあります。
保護犬の里親になる場合の条件とは?
保護犬の里親になる場合の条件は、譲渡元により異なりますが、一般的に多いのは次のような条件です。
- 終生飼育を約束できる
- 完全室内フリーによる飼育
- 小学生以下の子どもがいない
- 仕事をしている人が家族にいる、それに準ずる収入がある
- ペット可能住宅に住んでいる
上記で挙げた条件以外にも、保護犬の健康状態や、性格、保護された背景などにより個々に譲渡条件が設けられているケースもあります。
保護犬を飼うのは難しいからこそ覚悟してほしいこと
保護犬を飼うのが難しいことを理解した上で、保護犬を迎えようと検討された方に是非覚悟してほしいことがあります。私自身が保護犬を迎え、悩んだこと失敗したこと、また保護活動をしている人から得ている情報も踏まえてお伝えします。
その子が保護された背景を十分理解する
最初に紹介しましたが、保護犬といってもさまざまな背景のもと保護されています。虐待されてきた子、大好きな飼い主から保健所に持ち込まれた子、散歩したことがない子、ご飯もまともに食べさせてもらえなかった子、などさまざまな背景があります。
里親になる保護犬の背景を譲渡元からしっかり聞き、確認し理解しましょう。背景を理解することが信頼関係を築くための第一歩となります。
保護犬はその保護背景から臆病であり、警戒心の強い犬が多いことを説明してきました。雷や花火の音、知らない生活音にびっくりして脱走することもあります。また、お散歩時に首輪が抜けて逃げてしまうこともあります。
保護犬を迎える場合は、特に信頼関係が十分に構築できるまでは、脱走対策を十分に行い、お散歩時も首輪とハーネスをつける、ダブルリードにするなど徹底してください。
信頼関係を築くには長時間かかること
人間から辛い思いをさせられた犬は、心を開くまで相当な時間がかかります。実際に、私がお世話になった保護団体さんにいた犬でも、ケージから出てこない、新しい飼い主が決まっても何ヶ月もケージから出てこないというワンちゃんもいました。
信頼関係を築くためのスタート地点に立つことすら困難な犬もいます。無理せず保護犬のペースに合わせて接することを心がけてください。
しつけも焦らず穏やかに時間をかけて行うこと
信頼関係を築くのに時間がかかる場合は、しつけをするまでも相当の時間を要します。なぜならしつけは、愛犬と飼い主の信頼関係・主従関係の下に成り立つからです。
しかし、犬はとても賢い動物で飼い主を含む周りの人間をよく観察し、理解しようとしています。個々の保護された背景を十分理解した上で、その子のペースでじっくりと焦らずしつけを行いましょう。
成犬から迎えた場合は、特にしつけが難しいケースも多いでしょう。自分ではどうすることもできない場合は、プロのトレーナーさんに相談するのも一つの方法です。しつけ教室にいくもの良いでしょう。ただし、まずはしつけよりも前に愛犬と仲良くなること、信頼関係を築くことが重要です。
先住犬がいる場合は特に相性など注意が必要
2匹目を保護犬から迎えようとした場合、先住犬との相性も注意が必要です。保護団体さんから譲渡してもらう場合、トライアル(飼育お試し)期間が設けられるケースが多いです。
トライアル期間は概ね2週間ほどが多いのですが、先住犬がいる場合は個人的には1ヶ月〜3ヶ月ぐらいトライアルさせてもらい様子を見た方がよいと思います。わが家でのケースですが、最初は相性が良いと思っていた犬同士ですが、月日が経つうちに2匹目として迎えた保護犬が慣れてきて性格や行動が変わっていき、結果として2匹の相性が最悪だったということがあります。
多頭飼いが向いていない犬種や性格の犬がいるので、先住犬がいる場合は特に2匹目として保護犬を迎えようとする場合はじっくり検討しましょう。我が家の1頭目の保護犬の場合は、性格的に多頭飼いは向いていない子でした。
保護犬を迎える場合のメリット
飼うのが難しいと言われている保護犬ですが、実は保護犬を迎えるにあたってメリットもあります。
譲渡元が保護団体の場合、お迎え後も相談ができる
特にペットショップから犬を迎える場合、ペットショップはビジネスですから購入してもらったらそれで関係はおしまいのケースが多いでしょう。しかし、譲渡元が保護団体の場合は違います。
保護団体さんから保護犬を迎えた場合は、定期的に成長状況などを写真などと合わせて報告してほしいといわれることもあります。イコール、定期的に連絡がとれるので何かあった時に相談できる相手がいるということです。「譲渡してもらってはい、終わり」ではなく、しつけなどで困った時相談できる相手がいるのはとても心強いことですね。
必要最低限のしつけが済んでいる場合もある
わが家は乳飲み子で保護された、雑種の中型犬を推定生後7ヶ月の時に迎えました。譲渡元が保護団体であったため、トイレやお座り、散歩時のトレーニングなどある程度のしつけが入っていました。
他の飼い主から譲渡される場合も、前の飼い主がしつけをある程度済ませている可能性もあるでしょう。ペットショップやブリーダーから迎える場合はしつけは入っていないことが多いので、しつけが済んでいる場合もあることも保護犬を迎えるメリットの一つと言えるのではないでしょうか。
健康状態や病気の状態など嘘偽りなく教えてくれる
悪質なブリーダーやペットショップの場合は、販売している犬を早く売りさばきたいため、病気や健康状態を隠していることもあると言われています。
保護犬の譲渡元が保護団体、保健所の場合は、健康状態や病気の状況を嘘偽りなく教えてくれるでしょう。
成犬の場合は、大きさや体重がある程度決まっている
犬をペットショップやブリーダーさんから迎える場合は子犬からお迎えするケースが多いのではないでしょうか。純血種の場合、犬種ごとにある程度大きさや体重が予想はできますが、どれぐらい大きくなるのかは予測不能です。
しかし、成犬の保護犬の場合はある程度成長しきっているため、迎えた時からかけ離れて大きくなったり体重が増えることは少ないと言えるでしょう。
保護犬を飼う難しさも理解した上でお迎えするか検討しましょう
保護犬を飼うのは難しいと言われています。保護犬ごとの保護された背景が異なるからです。辛い過去を持つ犬たちを迎え飼育するのは、たやすいことではありません。
しかし、保護犬だけでなく、犬を育てる・動物を育てるということは一筋縄ではいかないことが多いでしょう。どんな犬でも終生飼育できるのかをしっかり考えた上で、犬を迎えるのか検討してほしいと思います。
実際に保護犬を引き取り、育てています。その実体験をもとに保護犬を飼う難しさ、大切さなどを説明します。ワンちゃんの飼育を検討している方は、一度保護犬の迎え入れを検討してみてくださいね。