犬の白内障の症状は?原因や予防策、治療方法などを詳しくご紹介!【獣医師監修】

犬の白内障とは?

「最近ボールを投げてもすぐに反応してくれなくなった……」
「昔より歩くのがゆっくりになった気がする……」

それは「白内障」のせいかもしれません。

「でもうちの子はまだ若いし……」

そう思う方もいるかもしれませんが、犬の白内障は人間に比べて若い頃から発症しやすい怖い病気なんです。

今回は白内障についてご説明します。犬の白内障の知識を身に着けることで、大切なワンちゃんの目を守ることが出来るかもしれません。ぜひ参考にしてくださいね。

西岡優子(にしおか ゆうこ)獣医師
北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。
西岡優子 先生

犬は人間よりも臭覚が敏感な為、白内障になっても生活を全く送れなくなるということはほとんどありません。しかし、視力が低下することにより、生活を送る上で危険な場面が増え、飼い主のサポートがより必要になってきます。お散歩中はもちろん、家の中でも、ワンちゃんが怪我をしないよう柱やテーブルの角に柔らかい布を巻くなど、安全に生活を送れる為のサポートをしてあげてください。

犬の白内障とは?

犬の白内障とは?

症状

犬の白内障の症状
  • 眼が白く濁る
  • 歩くのがゆっくりになる
  • 歩くと物にぶつかるようになる

白内障は水晶体が白く濁る疾患です。飼い主が見てわかるくらい目が白濁している頃には症状がかなり進行している可能性があります。

水晶体の濁りが広がっていくにつれて徐々に視力も落ちていくので、最初は暗いところでは動くのを嫌がるようになり、だんだんと投げたボールに反応しづらくなったり、散歩中に歩くのがゆっくりになったりします。

考えられる原因

考えられる原因
  • 遺伝性
  • 加齢
  • 糖尿病など疾患によるもの
  • 角膜への外傷

白内障は発症した年齢によって先天性・若年性・加齢性という3つのタイプに分けられます。

先天性白内障は発症が1歳以下の場合に分類され、生まれつき水晶体が濁っているなど、遺伝的な要因が最も多いとされています。遺伝的に白内障になりやすい犬種はプードル、柴犬、チワワ、ポメラニアンなど様々です。

発症が1~6歳の場合は若年性白内障に分類され、原因は遺伝的要因の他、外部からの刺激による眼の外傷や糖尿病などの疾患によって引き起こされることがあります。

6歳以上で発症すると加齢性白内障と言われ、加齢による全身機能の衰えと共に水晶体が変質して白濁し、視力が低下していきます。加齢による眼の白濁は「白内障」の他に「核硬化症」でもみられ、見た目の特徴は似ていますが「核硬化症」によって視力が低下することはありません。

犬の白内障の4つのステージ

犬の白内障の4つのステージ

白内障は水晶体の白濁の進行状況によって4つのステージに分類されています。

初発~未熟期~成熟期~過熱白内障に分けられており、ステージが進行するにつれて目の白濁が目立つようになって視力が低下していきます。

①初発白内障

白内障の初期状態です。水晶体の白濁は全体の10~15%未満で水晶体の淵に濁りが見られます。
見た目に変化がなく日常生活への支障もほとんどないので、飼い主はもちろん獣医師でさえも発見が難しい状態です。

②未熟白内障

未熟期になると水晶体の濁りは全体の15%以上となり、白濁が黒目の一部にもでるようになります。まだこの段階では視力に大きな影響はありませんが、暗いところではやや見えづらくなったり、視界がかすむ、ぼやけるなどの症状が徐々に出始めます。

このステージで治療を始めることができれば、内科治療で白内障の進行を遅らせることができます。

③成熟白内障

成熟期になると水晶体の白濁が100%になり、黒目の全体が白くなります。このステージになると視力はほとんど失われていますが、目の前を動く物や光に反応することはできます。

この状態を放置してしまうと、水晶体が溶け出してブドウ膜炎や緑内障などの合併症を引き起こす可能性があります。白内障自体は痛を伴いませんが、ブドウ膜炎や緑内障では激しい痛みを伴うので、合併症を引き起こす前に治療を開始したいところです。

④過熱白内障

過熟期は白内障の最後の進行段階です。水晶体全体が白く濁り溶け出してしまっています。失明のリスクが高く、また手術すらできない容態の場合もあります。

犬の白内障の治療法は?

犬の白内障の治療法は?

白内障の治療方法には内科的治療と外科的治療の2種類があります。

初発~未熟期は点眼治療やサプリメントの投薬による内科的治療、成熟期~過熱期になると外科的治療が必要になる場合があります。

治療方法

内科的治療にはタンパク質の変性を防止する点眼治療とビタミンC、ビタミンE、アントシアニン、ルテインなど抗酸化作用を含むサプリメントの投薬があります。特にサプリメントの投薬は水晶体の白濁の進行を遅らせる効果がある為おすすめです。内科治療は白内障の初期の進行を遅らせたり合併症を防ぐものであり、白内障を治す効果はありません。

白内障が進行すると、白く濁った水晶体を取り人工レンズを挿入する外科的治療が必要になります。白内障手術が成功すると視力を取り戻すことができます。犬の白内障手術や検査をおこなっている病院は少なく、眼科専門の病院に行く必要があります。眼科専門の病院は二次紹介施設が多いため、手術を受けるにはかかりつけ医の紹介状が必要です。合併症や全身麻酔のリスクがある為、手術を希望する時は獣医師とよく相談してください。

予防方法

遺伝や加齢が原因で引き起こされる白内障の発症には明確な予防方法はありません。

白内障は飼い主はもちろん獣医師でも早期発見が難しい病気なので、遺伝的に白内障になりやすいワンちゃんは若い頃から定期的に眼の検査を受けたりサプリメントの服用をすることがおすすめです。

背の高い草の生えた茂みに入らせないようにしたり、ワンちゃんの周りに物をたくさん置かないように気を付けることで、眼の外傷による白内障は防止することができます。

白内障になりやすい犬種はある?

白内障になりやすい犬種はある?

遺伝的に白内障になりやすい犬種は日本では以下のような犬種があげられます。

・柴犬・チワワ・ダックスフンド・トイ・プードル・ポメラニアン・パグ・パピヨン・ビーグル・フレンチブルドッグ・ペキニーズ・ボーダーコリー・マルチーズ・ヨークシャ・テリア・アメリカン・コッカー・スパニエル・コーギー・狆・ビーグル・ラブラドール・レトリーバー

犬の白内障は早期発見が重要

犬の白内障は早期発見が重要
白内障の初期症状
  • 眼が白っぽくなる
  • 暗いところで歩きたがらなくなる
  • ボールを追うことができなくなる

犬の白内障は早期発見が難しい病気です。

白内障の初期症状としては、眼が白っぽくなる・暗いところで歩きたがらなくなる・ボールを追うことができなくなるなどがありますが、これらの症状が出た際にはすでに未熟期から成熟期の間までステージが進行している可能性があります。

普段からワンちゃんの様子をよく観察し、おかしいな?と感じたらすぐに病院に連れていくことが大切です。

ペット保険の加入がおすすめ

ペット保険の加入がおすすめ

白内障になりやすい犬種を飼う際は、ペット保険への加入がおすすめです。

白内障は明確な予防法がない上にゆっくりと進行していくので、定期的な眼科診察や点眼・投薬治療が必要になります。犬の眼科診察は専門医や専門の病院でおこなうこともあり、通常の診察よりも費用がかかります。更に症状が進行していくと手術が必要になることもあるかもしれません。

ペットの治療費は人間と違って保険が効かないので、人間の病院と比べると驚くほど高額になりがちです。もしもの時に備えてペット保険に加入しておけば、治療費や手術代を安く抑えることが出来ますよ。

遺伝性の白内障は若い時に発症する可能性もある為、白内障になりやすい犬種を飼われている方は早めにペット保険に加入することをおすすめします。

もし愛犬が白内障になってしまったら

もし愛犬が白内障になってしまったら

もし愛犬が白内障になってしまったら、どのようなことに気を付けるべきでしょうか?

白内障のワンちゃんと生活する上で気を付けたいポイントは4つあります。1つずつ紹介するので参考にしてくださいね。

室内のレイアウトは変えないようにする

ワンちゃんが白内障になったら部屋のレイアウトは変えないようにしましょう。眼の悪いワンちゃんが安全に生活できるように家具を移動させたり、なるべく物を置かないようにした方がいいと考えるかもしれませんが、犬は眼が見えなくても慣れている場所なら記憶と嗅覚である程度行動することができます。

よかれと思って家具の配置を変えてしまうと、かえってぶつかってしまったりして生活がしづらくなってしまうかもしれません。ワンちゃんが白内障になったらなるべく家具の移動は控えるようにしましょう。

声かけなどスキンシップをするときには気をつける

視力の悪いワンちゃんを触ったり、抱っこするときには気を付けて下さい。いきなり後ろから触れようとするとおどろいて噛みついたり、ストレスを与えてしまいます。

白内障のワンちゃんに触れる時は、驚かさないように「触るよ」などと声をかけて優しく触れるようにすると、ワンちゃんも安心することができますよ。

お散歩の際、交通量の多い道では抱っこするなど対策を

外へのお散歩はいい気分転換にもなりますが、過ごし慣れた安全な室内と違い、眼の悪いワンちゃんにとって危険の多いポイントでもあります。

眼の悪いワンちゃんは車はもちろん、自転車や他の犬とすれ違う時も咄嗟に反応ができないことがあるので、交通量の多い道では抱っこをしたり、リードを短く持つようにしてください。

眼が悪いと目の前の電柱に気が付かずにぶつかってしまうこともよくあるので、飼い主がしっかりとリードをコントロールして、快適なお散歩ができるようにしたいですね。

音には十分配慮する

白内障のワンちゃんは衰えた視力を補うために、嗅覚や聴覚により敏感になります。その為、今まで以上に大声や突然の物音にストレスを感じやすくなっています。

白内障のワンちゃんと一緒に生活する時には、大きな音を出さないように気を付けましょう。掃除機やバイクの音など、ワンちゃんによって苦手な音は様々なので、ワンちゃんの嫌いな音からはなるべく遠ざけてあげるように工夫をしてあげてください。

【まとめ】犬の白内障とは?

【まとめ】犬の白内障とは?

白内障は早期発見が難しく、飼い主がおかしいなと感じたら既にかなり進行している可能性のある病気です。白内障が進行すると手術が必要になることもある為、白内障が多い犬種は若い時からの定期的な眼科の診察がおすすめです。

また白内障が発症すると長期的な検査や点眼治療が必要になるので、ペット保険の加入をしておくと安心です。

眼の悪いワンちゃんは非常にデリケートで、ストレスが溜まりやすくなっています。
今まで通り快適な生活ができるように飼い主が気を配るようにしたいですね。

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