子犬は成犬に比べて身体が未発達なため、下痢はよく見られる症状であり、珍しいことではありません。しかし、下痢を何日間も放っておくと、子犬の体調がどんどん悪化してしまう恐れがあります。
子犬を守るためにも、下痢が起こる原因をしっかり把握し、適切な対処をしていきましょう。
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目次 -INDEX-
子犬が下痢をする5つの原因 それぞれの対処法も解説
子犬が下痢を起こす理由は様々です。下記によくある下痢の原因とそれぞれの対処方法を5つ挙げました。
愛犬が下痢をしたとき慌てなくてもすむように、下記の記事をぜひ参考にしてください。
- ストレスを感じている
- 新しいドッグフードに変えた
- 誤食や誤飲してしまった
- 寄生虫感染
- ウイルス感染
ストレスを感じている
子犬を飼い始めるときに多いのが、飼育環境の変化などのストレスで下痢を起こしてしまうことです。
飼育場所や、お世話する人が変わると、子犬はストレスを感じてしまい、体調不良の原因にもなります。子犬にとっては、まったく知らない場所に突然、連れていかれてしまうことで、大きな不安を抱えてしまうのです。
飼育環境に慣れたとしても、まだまだ遊び足りない、眠りたいときに眠れないことで、身体に大きなストレスを与えてしまいます。子犬が、ストレスを溜めないように、飼い主さんがしっかりと配慮する必要があります。
対処法
子犬を迎え入れたらまずは新しい環境に慣れるように、配慮することが大切です。環境変化のストレスで子犬は身体が疲れているため、過度に子犬を触らない、騒ぎ立てないよう、静かに見守りましょう。
少しずつ子犬との距離を縮めていくことが、ベストです。環境に慣れてきたら、おもちゃを使ってコミュニケーションをとったり、ゲージから出してあげるなどして、子犬の遊び相手をしてあげましょう。
ヤンチャ盛りの子犬は、遊ぶことが大好きですが、遊びすぎもストレスになるので、しっかり休養の時間も与えてあげましょう。
新しいドッグフードに変えた
子犬の食べているドッグフードを変えることで、胃腸がビックリして下痢を起こすことがあります。子犬はとくに成犬とは違って、胃腸の働きが未熟なため、消化不良を起こしやすいのです。
ドッグフードであればなんでもいいやと、考えている方も多いかと思いますが、慎重に選ぶ必要があります。今までとは違うドッグフードを与えることで、胃腸に刺激を与えてしまい、下痢へとつながってしまうのです。
子犬の時期は、成長段階でもいちばん大切なときになりますので、子犬にとって最適なドッグフードを選ぶ必要があります。
対処法
子犬が下痢をしないようにするためには、今まで食べていたものと同じ種類のドッグフードを与えると良いでしょう。
それでも子犬が成長するなかで、どうしてもドッグフードを切り替えなければいけないときもあります。犬の成長に合わせてドッグフードを変える場合は、今まで食べていたドッグフードと、新しいドッグフードを混ぜて、少しずつ胃を慣らしていきましょう。
まだ生後2カ月くらいでしたら、ドッグフードをお湯でふやかすことで、胃に負担を与えないようにすることができます。
誤食や誤飲してしまった
子犬が変なものを誤食または誤飲してしまい下痢を起こすことがあります。とくに子犬の時期はなんでも口に入れてしまうことから、誤食や誤飲のリスクが高くなるのです。
液体のハイターや、有害物質が入った殺虫剤などを誤飲してしまうと、下痢だけではなく、激しい嘔吐など重症化する場合があります。成犬でもつらい症状が子犬に起こると、身体に大きな負担を与えてしまうので、誤飲はとくに注意が必要です。
子犬の排便のなかに異物が入っていれば、誤食による下痢の可能性が疑われます。しっかりと対処をして、子犬につらい思いをさせないようにしましょう。
対処法
子犬が誤食や誤飲するのは一瞬であり、気づくことができない、もしくはあとで気づく場合が多いです。
子犬が誤食や誤飲をしないようにするためには、飼い主さんの見守りが必要となります。子犬がゲージの外に出て自由な時間はとくに注意が必要です。子犬から目を離さない、近くに小さい部品などの飲み込む可能性があるものは置かないようにしましょう。
子犬がお留守番をするときは、ゲージの中に入れるなどして、子犬が誤食や誤飲しないように行動範囲を制御します。
誤食・・・食べ物ではないものを食べること
誤飲・・・洗剤など飲み物ではないものを飲むこと
寄生虫感染
子犬の寄生虫感染とは回虫や条虫、鞭虫のような寄生虫が、子犬に感染してしまうことです。寄生虫感染による下痢のなかでも、心配されるのが回虫という糸のような寄生虫が感染することによる下痢です。
子犬は特に回虫がおなかの中にいることが多く、激しい下痢やときには血の混じった血便がでることもあります。回虫は放っておくと、体内で卵から孵化し、幼虫になり内臓に迷い込み臓器をむしばむこともあるのです。成虫になると卵を産むこともあり、子犬の体にさらなる悪影響をもたらしてしまいます。
子犬が下痢をしたことで、知らないうちに寄生虫に感染していたと、あとから気づく飼い主さんも多くいらっしゃいます。
対処法
子犬の回虫感染の原因として多いのが、母子感染になります。母子感染とは、子犬が母犬の母乳を飲むことで感染したり、母親のおなかの中にいるときに胎盤を介してすでに感染してしまうことです。
予防することは難しいのですが、便の中に回虫の卵や虫体が発見されたら、駆虫薬で治療することは可能です。動物病院の医師の指示のもと、駆虫薬を二回ほど投薬することで、体内にいる回虫を駆除することができます。駆虫薬には飲むタイプと、背中に垂らすスポットタイプがあるので、飼い主さんのやりやすい方で駆虫しましょう。
ウイルス感染
子犬の激しい下痢が続く場合は、ウィルス性の感染症にかかっている可能性があります。
子犬がかかるウィルス感染症でいちばん恐ろしいのが、パルボウィルスです。パルボウィルスは感染力も強く、まだ免疫が少ない子犬にとっては脅威のウィルスになります。
激しい下痢とともに、激しい嘔吐、食欲不振、元気がなくぐったりするなど、命に関わることもあります。とくに、激しい下痢は独特なニオイで、普通の便のニオイとは違った刺激臭がします。
原因としては子犬同士の接触や、子犬から人を介してほかの子犬にうつることもあります。子犬の命を守るためにも、的確で早い対処が必要となるのです。
対処法
子犬の激しい下痢が続く、食欲がない、いつもと様子が違うと思ったら、すぐに動物病院に連れていきましょう。パルボウィルスは、飼い主さんの力だけでは対処ができませんので、獣医さんによる治療が必要となります。
子犬の症状が重い場合は、入院の可能性もあります。子犬を連れていく時間が早ければ早いほど、子犬の体への負担も軽減していくので、飼い主さんの早い対処が大切です。
驚異のウィルスから子犬を守るためにも、下痢のサインを見逃さないようにしましょう。
子犬の下痢の症状とは?
子犬の下痢は、形のない便、水気の多い水様便がでるなどの症状が、目に見えて分かります。形のまったくない便が出たときは、下痢症状であり、しっかりと観察する必要があるのです。
ひどい下痢の場合は、水のように激しく飛び散り、量も多くなることから、脱水につながることもあります。子犬の便に血液が付着している場合は、後に下痢になる可能性もあるので、便の色もしっかりと様子観察しましょう。
すぐに病院へ連れて行った方がよい症状とは?
子犬の下痢で、早急に対処が必要な場合は、動物病院に連れていく必要があります。子犬の下痢が何日も続く、激しい下痢がでる、血が混じっている、下痢の量が多いときはすぐに動物病院に連れていきましょう。
また、下痢だけではなくほかにも、嘔吐、元気がない、食欲がないなど、ほかの症状が出ている場合も、早めの治療が必要です。子犬にとって下痢は栄養失調、脱水、食欲不振による低血糖につながる可能性もあるので、いつもと違う便であるときは、注意しましょう。
自宅で様子をみてもよい症状とは?
子犬が下痢をする理由として、身体が未発達なため、胃腸が未熟であることが考えられます。食事の量が多い、水分の多いふやかしたフードを与えることで、多少便がゆるくなることはよくあります。
消化不良もよくあることで、子犬の食べたドッグフードが形のある状態で、下痢と一緒にでてくることもあります。子犬に与える量が明らかに多かった、ドッグフードを変えたタイミングで下痢したなど、心当たりのある下痢に関しては様子をみても良いでしょう。
また、次の日には形のある便をしたなど、一時的な下痢の場合はさほど心配ありません。
子犬が下痢になる前から便は日々チェックしよう!
子犬の健康状態を観察するときに、とても大切なことが、排便の状態をこまめにチェックすることです。便の形状はもちろん、血液が混じっていないか、黒い便をしていないか、量はどのくらいか、細かく確認しましょう。
また、便の中になにか異物は入っていないか、寄生虫はいないかも一緒にチェックすることも大切です。子犬は、自分の便を食べてしまう場合があるので、健康観察をするためにも、子犬と一緒にいる時間を長く作ると良いでしょう。
子犬が万が一下痢をしていた場合は、前日もしくはその日の食事は、なにをどのくらい与えたか、心当たりがないか確認します。
子犬の下痢を予防するためにできることは?
子犬の下痢は、体調不良のサインでもありますので、できる限り予防したいですよね。子犬の下痢を予防するためにも、飼い主さんの子犬に対する知識がとても大切になります。
消化に良いドッグフードを与える、ストレスのない環境作り、危ないものはまわりに置かないように配慮します。清潔さも大切であり、ゲージの清掃や、子犬のシャンプーやブラッシングをすることで、ウィルスや寄生虫の予防ができるのです。
また子犬の健康維持が大切なので、定期的に動物病院で健康診断をすることも、下痢の予防につながります。
子犬の下痢に関するQ&A
まとめ
子犬が下痢をした場合、まずは便の観察をしっかりすることが大切です。下痢だけでなく、ほかにも症状が出てないかなど、しっかりと子犬の様子を観察をします。
子犬に元気がない、いつもと違う様子があれば、自分で安易に判断せず、すぐに動物病院に連れていき、適切な治療を受けます。早期発見、早期治療が子犬の身体への負担を少なくするのです。
子犬の下痢を予防するためにも、日頃からの健康管理、子犬に合った新鮮なドッグフードを与えるようにしましょう。清潔の良い環境でストレスを与えないように配慮することも大切です。
体格の小さな子犬では、下痢が少し続いただけで、重度の脱水症状や低血糖になる恐れがあります。ですので、早目に動物病院を受診しましょう。受診する際には、下痢そのものや、下痢の付いたペットシーツなどを持参すると、便の状態がわかりやすく、新鮮な便であれば糞便検査もできるため、診断の糸口となり適切な治療を早急に受けることができる場合もあります。ですので、受診の際には便を持参することをおすすめします。