犬の目やにが増える原因は?心配するべき危険な目やになどを獣医師が解説

犬 目やに

朝起きた時に愛犬の目頭や目尻に少量の目やにがついていることがあると思います。

目も体の他の部分と同じように代謝をして、古くなった細胞を入れ替えており、目やには皮膚でいう垢のようなもので、古くなり剥がれ落ちた細胞や、目に付着したホコリやゴミが涙に混じってできたものです。

目やには主に、古くなった目の細胞やホコリやゴミなどを体の外にに出す働きをしていますが、目やにの量が増えたり、色や臭いなど目やにの状態がいつもと違う場合には、重大な病気が隠れていることもあるため注意が必要です。

今回は、目やにが増えるのは危険なサインなのか?、目やにが増える原因について、病院の可能性がある目やにや心配のいらない目やにの特徴について解説し、目ヤニを防ぐ方法についても紹介しますので、是非参考にしてみてください。

西岡優子(にしおか ゆうこ)獣医師
北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。

犬の目やにが増えるのは危険なサイン?

犬の目やにが増えるのは危険なサイン?

犬も人と同じように、寝起きに目やにがみられることが多いです。

前述したように、目やには目の古くなり剥がれ落ちた細胞や、目に付着したホコリやゴミが涙に混じってできたもので、目やにが出ることは生理的現象なのです。

ですので、生活環境が埃っぽかったり、砂ボコリが舞うような場所にお散歩に行った場合に、一時的に目ヤニが増えることに関してはあまり問題はありません。

しかし、目やにが増えることが長く続いたり、目やにの色やニオイ、粘稠度など状態が変わってきた場合には注意が必要です。

また、生理的な目やには量が少なく、白や黒、茶色などの単色が普通ですが、目やにの量が非常に多かったり、濃い黄色や緑色でドロドロと粘稠度が高かったり、悪臭がする場合には病気が原因の目やにの可能性があります。

そのうち目やにが落ち着くだろうと様子を見ていたら、病状が悪化し、失明などの取り返しのつかない事態になってしまうかもしれませんので、目やにが多くなった、今までとは状態の違う目やにが出始めた、目の様子がおかしいなど気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の目やにが増える原因

犬の目やにが増える原因

犬にできる目やにには、古い細胞やホコリやゴミなどを外に出すための生理的な目やにと、病気などの理由によりできる目やにの2種類があります。

ここでは、これらの目やにが増える原因を解説していきます。

原因1 目にホコリやゴミ、異物などが入った場合

目にホコリやゴミを外に出すために出る目やには、健康な犬でもみられる生理的なものなので、あまり心配はありません。

しかし、生理的な目やにでも量がいつもより長く続く場合には注意が必要です。

目やにの量が多い状態が長く続いたり、目やにの色やニオイが変わった場合には、早目に動物病院を受診しましょう。

原因2 アレルギー

犬は食べ物や、花粉などの環境中の物質が原因でアレルギーを起こします。

アレルギーによる目の症状としては、強いかゆみ、目の充血、涙が多くなるなどです。もし、愛犬に目をしきりにこすっている仕草がみられたら、アレルギーの可能性があるかもしれません。

アレルギー症状が長く続くと、犬が強い痒みから目をこすりすぎて、目の周りが赤くなったり、脱毛するなど皮膚炎を起こす場合があります。

さらに、アレルギーによる目の痒みと、目の周りの皮膚の痒みから、犬が目をこする頻度が増え、結膜炎など目の状態が悪化し、目やにや流涙などの症状が現れるようになるのです。

ですので、愛犬に目を痒がる様子や充血がみられたら、早目に動物病院を受診することをオススメします。

原因3 角膜炎・角膜潰瘍

角膜とは、眼球の中央部分(黒目部分)表面を覆っている透明な膜状の組織です。角膜は外からの刺激や、細菌やウイルスなどの微生物が侵入しないように黒目を守る役割をしています。

角膜に傷がついてしまい、そこから微生物が侵入し、角膜に炎症が起こったものが角膜炎です。さらにその角膜炎が進行し、角膜の内部で炎症が起きている状態を角膜潰瘍といいます。

角膜炎の症状は、目やにの他、結膜の充血、痛みで目が開かない、流涙などです。また、角膜炎が進行して角膜潰瘍になると、目をまぶしそうに閉じるような仕草が頻繁にみられるようになり、白目は充血で赤く、黒目は白く濁ったような色になります。

特に、目が大きく飛び出たシーズーやチワワ、パグなどの犬種で多い病気です。

原因4 結膜炎

結膜は、白目の部分とまぶたの裏側の膜組織です。結膜炎とは、この結膜に起こる炎症のことで、充血と目やに、痒み、まぶたの腫れなどの症状がみられます。

結膜炎には感染性と非感染性の2つのタイプがありますが、犬の場合はアレルギーや異物による刺激によって引き起こされる非感染性のものがほとんどです。

原因5 ドライアイ

ドライアイとは、角膜が乾燥している状態のことをいいます。ドライアイになる理由は、涙腺から分泌される涙の量が不足や、目の形状の不具合などから涙が角膜に十分に行き渡らないことなどです。

ドライアイの原因には、免疫細胞の異常な働きによる涙腺の破壊、ウイルス性疾患、アレルギーなど様々なものがあります。

症状としては、黄色や緑色のネバネバした目やに、結膜の充血などがあり、シーズー、ウエストハイランドホワイトテリア、パグ などの犬種でよくみられる病気です。

原因6 まつ毛の生え方の異常

原因6  まつ毛の生え方の異常

まつ毛の生える向きが本来と逆になってしまう逆さまつ毛や、本来生えないような場所にまつ毛が生える異所性睫毛(いしょせいしょうもう)など、まつ毛の生え方の異常によっても目やにがみられます。

これは、まつ毛がまぶたの内側に入り込んでしまい、まつ毛が眼球を刺激しているからです。

まつ毛の生え方が異常な場合には、目やにの他に、結膜の充血、痛みで目が開かない、流涙などの症状もみられます。

逆さまつげを抜く場合は、自身で行うのではなく動物病院で処置してもらうと安心です。

原因7  眼瞼内反症・外反症

眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)とは、まぶたが内側にめくれている状態のことをいい、反対に外側にめくれている状態を眼瞼外反症(がんけんがいはんしょう)といいます。

重度の結膜炎や外傷などによるまぶたの変形、目の周りの筋肉や神経の異常などが原因で起こることもありますが、主に先天性の病気です。

眼瞼内反症、眼瞼外反症ともに、角膜や結膜が刺激を受け、目やにや流涙などの症状がみられます。

病気の可能性がある犬の目やにの特徴

病気の可能性がある犬の目やにの特徴
病気の可能性がある目やにの特徴
  • 濃い黄色や緑色
  • ドロドロやネバネバなど粘稠度が高い
  • 1日に3回以上目ヤニがでる
  • ニオイが臭い

人では健康でも黄色い目やにが出ることもありますが、犬にとっては濃い黄色の目やに緑色がかった目やには、目の病気の可能性があります。

細菌感染が起こっている場合には、目やにが変色して濃い黄色や緑色になったり、膿のようなベタベタやドロドロの状態になったり、臭いニオイを発することがあるのです。

このような状態のまま放置しておくと、失明など危険な状態になるため、早目に動物病院を受診するようにしましょう

心配する必要がない目やにの特徴

正常な目やには目の中に入り込んだホコリやゴミ、古くなった細胞が主成分なので白や黒や茶色でカラカラに乾いていたり、透明で白くゼリー状です。

量も少なく、1日に1~2回拭く程度の量で、人と同じように寝起きに目に付着しています

このような目やには生理的な目やになので、特に問題はないでしょう。

目やにを防ぐためのケア方法

目やにを防ぐためのケア方法

ここでは、自宅で出来る目やにを防ぐためのケア方法について紹介しますので、是非参考にしてくださいね。

【ケア方法1】目の周りの毛を整える

目の周りの毛が長く伸びていると、毛が目に入り刺激が加わることで、目ヤニが増えたり、目の病気になってしまうことがあります。

そのようなことがないよう、定期的にトリミングをするようにしましょう。

また、衛生状態を保つためにグルーミングをして、いつも目の周りを清潔に整えるように心がけることが大切です。

【ケア方法2】目やにをきちんと取る

目やにがついた状態のままにしておくと、雑菌が繁殖し、目の病気になってしまうことがあります。

目やにが付いていたら、水やぬるま湯で濡らしたコットンやガーゼを用意し、目やにをふやかしてから、優しく取り除いてあげましょう。

この時、ゴシゴシこすってしまうと犬の皮膚に炎症が起こったり、目の表面に傷がつく場合があるため注意が必要です。

また、目やにが毛に絡まって上手く取れない時に無理やり引っ張って取ろうとすると、皮膚が引っ張られて犬が嫌がるので、目やにをしっかりふやかしてから、ノミ取りコームを使って取り除くようにしてあげましょう。

【ケア方法3】目薬を使う

ドライアイなど眼の乾きが原因で目やにが出ている場合には、目薬によって目を潤るおすことで、目やにの量を減らすことができる場合があります。

また、高齢犬では涙の量が減り、目の中のゴミを排出する機能が弱くなるため、そのような場合にも目薬は効果的です。

かかりつけの動物病院の獣医師さんに相談し、愛犬に合った目薬を処方してもらいましょう。

犬の目やに関する質問に回答!

犬の目やにはなぜ茶色?

正常な目やには目の中に入り込んだホコリやゴミ、古くなった目の細胞が主成分のため茶色をしています。

犬の目やにが出る理由は?

目やには古くなった目の細胞やホコリやゴミなどから出来ていて、それらを体の外に出すために目やにが出ます。また、病気が原因でも目やにが出るため注意が必要です。

目やにが片目だけ出るのは普通?

生理的な目やにが片目にだけ出るのは、目に入ったホコリの量などに差がある場合にみられるので、特に問題はありません。しかし、前述した病気が原因の目やにが片目にだけ出る場合は、片目にだけ炎症などがある可能性があるため、目に充血がないか、愛犬に目を痛がる様子がないかなどをしっかり確認して、早目に動物病院を受診しましょう。

犬の目やにの洗い方は?

目やにが付いていたら、ゴシゴシこすらず、水やぬるま湯で濡らしたコットンやガーゼを用意し、目やにをふやかしてから、優しく取り除いてあげましょう。目やにが毛に絡まって上手く取れない時には無理やり引っ張って取ろうとせず、目やにをしっかりふやかしてから、ノミ取りコームを使って取り除くようにしてあげてください。

まとめ

犬の目やにが気になって動物病院を受診する際には、目やにの色やニオイ、粘稠度などの状態を確認したり、目やにを顕微鏡で調べたりなどの検査を行う場合があるので、受診する前に目やにを取りすぎないようにしてください。

また、いつ頃から目やにが出るようになったのか目を眩しそうにパシパシしたり、痒がる仕草がないかなどを自宅で確認して伝えると、診断の手助けとなり、適切な治療を早目に受けることが出来ます。