人は寒い時にブルブルと小刻みに震えが起きますよね。犬も人と同じように寒さで震えることはもちろんですが、それ以外にも様々な原因で震えが起きるのです。
犬に震えが見られたら、「そのまま様子を見てもいい」のか、「病気などの可能性があるので動物病院を受診した方がいい」のか、飼い主さんは迷ってしまうと思います。
この記事では、犬が震える原因や対処法、病院に連れて行くべき危険性のある震え、飼い主さんがよく疑問に思う点について解説していますので、是非参考にしてください。
目次 -INDEX-
犬が小刻みに震えているのは危険なサイン?
犬が急に震えだしたら、「病気かも?」と心配になってしまいますよね。しかし、震えは全て危険なサインというわけではなく、健康な場合にも起こるのです。
犬が震える原因にはいくつかありますが、健康でも起こりうる生理的原因と、病気が関与している場合の2つに分類されます。
震えの原因によって対処法が異なるため、まずは原因をしっかり見極めることが大切です。
犬が小刻みに震える原因:生理的原因
健康な場合でも起こりうる生理的な震えは、主に寒さ・興奮・ストレス・恐怖・不安・甘え・筋肉量の減少などによって生じることが多いです。
まずは、震えの生理的原因から詳しく解説していきたいと思います。
- 生理的原因①寒さが原因で震える
- 生理的原因②興奮して震える
- 生理的原因③ストレス・恐怖・不安から震える
- 生理的原因④注目を浴びたい・かまって欲しくて震える
- 生理的原因⑤筋力の減少による震え
生理的原因①寒さが原因で震える
犬も人と同じで寒い時には、体にブルブルと震えが起きます。
寒さによる震えは、全身の筋肉を細かく動かすことにより熱を発生させ、体が低体温にならないよう体温を維持しようとする生理的な現象です。
特に、体温調節が苦手な子犬や高齢犬、チワワやトイプードルなどといった小型犬は寒さに弱いため、寒さによる震えがよく見られます。
生理的原因②興奮して震える
家に帰宅すると、犬が尻尾を振りながら興奮して吠えたり、身震いする様子を見たことはないでしょうか?
人では恐怖や不安などのネガティブな感情の時に震えが起きますが、犬ではネガティブな感情の時だけでなく、嬉しいや楽しいなどのポジティブな感情の時にも震えが起きる場合があります。ポジティブな感情が高まり興奮することにより、自律神経が乱れることによるものです。
興奮して起こる震えに関しては、気持ちが落ち着くとほぼ治まるため問題はないでしょう。
生理的原因③ストレス・恐怖・不安から震える
犬も人と同じで、不安や恐怖、ストレスを感じ場合には、自律神経系のバランスが崩れて震えが起きることがあります。
例えば、雷や花火など日常で聞くことのない大きな音がした場合、病院など苦手な場所に行く場合などです。
気持ちが落ち着き震えがすぐ治まる場合には、特に問題はありません。しかし、元気や食欲がなくなったり、嘔吐や下痢のような震え以外の症状が出てくる場合には、早目に動物病院を受診しましょう。
生理的原因④注目を浴びたい・かまって欲しくて震える
犬によっては飼い主の注目を浴びたかったり、かまってほしい場合に震える仕草をすることがあります。
学習能力の高い犬では、過去に震えていた時に飼い主さんが心配してかまってくれたことや、おやつをもらえたことを覚えており、震えているとかまってもらえると学習する場合があるのです。
飼い主さんから注目を浴びたい時やかまってほしい時には、何もなくても震える仕草をして、飼い主さんの気をひこうとすることがあります。
生理的原因⑤筋力の減少による震え
犬も歳を重ね高齢になると、筋肉量がだんだんと減少していきます。筋肉の減少に伴い体を支えることが辛くなり、後ろ脚の踏ん張りが効かなくなったり、立ち上がる際などに足腰がプルプル震えることがあります。
筋肉量の減少や筋肉の虚弱化によるものなので、震え自体には特に問題はないですが、犬の筋力が弱っているため、滑り止めなどを利用したり、段差を無くしたりなど、怪我をしないような安全な環境作りをしてあげましょう。
犬が小刻みに震える原因:病的原因
病気が原因の震えには、血糖値の極端な低下による震え、てんかん発作による震え、発熱や痛みによる震え、内臓の機能障害による震え、全身性振戦症候群による震え、中毒による震えなどがあります。
次は、病気が関与している震えの原因について見ていきましょう。
- 病的原因①血糖値の極端な低下による震え
- 病的原因②てんかん発作による震え
- 病的原因③発熱や痛みによる震え
- 病的原因④内臓の機能障害による震え
- 病的原因⑤全身性振戦症候群による震え
- 病的原因⑥中毒による震え
病的原因①血糖値の極端な低下による震え
犬で血糖値が何らかの理由で下がり、低血糖の状態になると震えが起こることがあります。
子犬の場合は、長時間の空腹や持続的な下痢による栄養吸収不全などが低血糖の原因です。成犬の場合では、肝臓腫瘍などで肝臓の機能が低下することによる糖の産生低下、インスリノーマなどのインスリン産生腫瘍、アジソン病などのホルモン疾患、重度感染症が低血糖の原因となることがあります。その他にも、糖尿病の治療で使用しているインスリンの過剰投与も低血糖の原因です。
低血糖では震えの他、嘔吐、ふらつき、元気がなくぐったりするなどの症状が見られます。
病的原因②てんかん発作による震え
てんかんとは、脳で強い電気信号が出されることによって痙攣(けいれん)などの発作症状が繰り返し起こる慢性的な脳の病気です。てんかんの犬に起こる発作症状をてんかん発作といい、発作の際には痙攣や震えなどが見られます。
てんかん発作は前触れなく突然起き、痙攣して手足をバタバタして暴れたり、手足をピーンと伸ばして硬直したりといった大きな発作から、全身ではなく体の一部分だけが痙攣を起こしたり、よだれ、震えなどの小さな発作まで多種多様な発作が繰り返し起こるため注意が必要です。
病的原因③発熱や痛みによる震え
犬は何かの病気が原因で体温が高くなると震えが起きる場合があります。原因としては、夏場に多い熱中症や、感染症などです。
また、体のどこかにケガをしていたり、椎間板ヘルニアや関節などに炎症を起こしていて、そこから来る痛みから震えがくることがあります。また、内臓の痛みからも震えがくる場合があり、膵炎による腹部痛などがその一つです。
病的原因④内臓の機能障害による震え
腎臓の機能が低下すると、尿から排出されるはずの老廃物や毒素が犬の体内に蓄積されます。このような状態を尿毒症といい、毒素が影響して体に震えや痙攣、食欲低下、元気消失、口臭、嘔吐、下痢などの症状が現れるのです。
肝臓の機能低下や門脈体循環シャントでは、本来肝臓で解毒されるはずのアンモニアなどが全身を循環してしまう肝性脳症という状態になります。肝性脳症は震えや痙攣、嘔吐、旋回行動、昏睡などといった症状がみられる危険な病態です。
病的原因⑤全身性振戦症候群による震え
全身性振戦症候群とは、全身に細かな震えを引き起こす病気です。若齢の小型犬での発症が多く、特にミニチュア・ピンシャーでの発症が多く見られます。
以前は、白い毛の犬に好発すると考えられており、ホワイト・ドッグ・シェイカー・シンドロームと呼ばれていましたが、実際には他の毛色の犬種でも発症することがわかりました。しかし、詳しい病態などはまだ解明されていない病気です。
病的原因⑥中毒による震え
害虫駆除薬や害獣駆除の罠、薬品など体にとって毒性のある物や、犬が食べると中毒症状を起こす物などを口にすると、中毒を起こし震えが生じることがあります。
また、中毒では震えの他によだれ、嘔吐、下痢、痙攣、衰弱など様々な症状も見られます。
犬が震える場合の対処方法
犬の震えへの対処方法は、生理的震えか病気が原因の震えかによって異なります。
また、原因ごとでも対処方法は異なるため、それぞれ原因に合わせた対処法を紹介していきます。是非参考にしてくださいね。
生理的原因による震えの場合の対処法
犬の震えが寒さによる場合には、過ごしやすい適切な温度にしたり、毛布などを置いたり、散歩の際に洋服を着せることで寒さを防ぐことがあります。
恐怖や不安、ストレスによる震えの場合には、恐怖やストレスの原因を取り除いて犬が安心できる環境にしてあげるようにしましょう。
犬の震えが老化によるものの場合には、筋肉量を維持するために、無理しない範囲で運動をすることがオススメです。また、滑り止めなどを利用して、踏ん張りやすく、歩きやすいような環境作りをしてあげたり、サプリメントを試してみるのも良いでしょう。
病気が原因による震えの場合の対処法
基本的に犬の震えの原因が病気の場合は、動物病院を早目に受診することをオススメします。
食事が1日2回など空腹時間が長い子犬で、元気はあるけれども震えが見られる場合には、低血糖の可能性があるため、1日の食事回数を3〜4回にしてみましょう。また、子犬でも成犬でも低血糖による震えが見られた時には、砂糖水やガムシロップなどの糖分をなめさせたり、歯茎に塗りつけたりすることで応急処置が出来ます。応急処置を行ったら、その後すぐに動物病院を受診しましょう。
病気による震えかどうかを見分ける方法は?
先述した生理的な震えを引き起こす要因に思い当たることがない場合や、震えの他にも別の症状が見られる場合には病気による震えの可能性があります。
また、いつも通りに過ごしてるにもかかわらず、ふとした時に震え出すような場合も注意してください。
こんな震えの場合は緊急の可能性あり!
以下のような震えが見られた場合には緊急性があるため、早急に動物病院を受診するようにしましょう。受診の際には、震えている様子を撮影した動画をみせたり、震えの回数や時間を計って伝えると、診断の手助けとなり適切な治療を早くうけることができます。
- 震えが痙攣(けいれん)に進行した場合
- 震えている時、呼びかけに反応しない場合
- 震えに加え、他の症状が見られる場合
【Q&A】犬の震えに対してみんなはどう思ってる?
【まとめ】犬が突然震え出したら獣医師に相談を
犬の震えには様々な原因があるため、生理的なことが原因なのか病気による震えなのかを飼い主さんが判断するのは非常に難しいと思います。
犬が突然震え出し、震え続けて止まらない場合には、かかりつけの獣医師さんに相談するようにしましょう。