ピーンと立った耳と短いしっぽ、筋肉質の体に精悍な顔つきのドーベルマンは、映画などで警護犬として登場することが多く獰猛で怖い犬というイメージが強くあります。
確かにドーベルマンは、しつけ方次第では危険な犬になることもありますが、ほんとうにドーベルマンは飼わないでといわれるほど危険な犬種なのでしょうか?
ここではドーベルマンを飼わないでといわれる理由とドーベルマンの性格や特徴・歴史とドーベルマンを飼うときにとくに注意するポイントを解説しましょう。
目次 -INDEX-
ドーベルマンってどんな犬種?
ドーベルマンは、警察犬や警護犬としてさまざまな場所で活躍している大型犬です。一般家庭でも飼育されていることもあり、家庭犬としての側面も持っています。
では、ドーベルマンは、どのような犬種なのでしょうか?まずは、ドーベルマンの大きさ・性格・毛色・歴史などについて解説しましょう。
ドーベルマンの大きさ
平均体高 | オス:68~72cm メス:63~68cm |
平均体重 | オス:約40~45kg メス:約32~35kg |
ドーベルマンは日本では大型犬に分類されており、通常メスよりもオスの方が体高・体重ともに大きいとされています。
ドーベルマンは、すらっとした体型とサラブレッドのような足・筋肉質の体つきでありながら優雅なボディラインが特徴的な犬種です。また、ドーベルマンは、自信があふれ凛とした顔つきの立ち姿が理想的とされています。
ドーベルマンの毛質・毛色
ドーベルマンのJKCが公認している毛色は、ブラックとブラウンです。ただし、公認されてはいませんがブルーとイザベラ(フォーン)などの毛色も見られ、まれにアルビノである白い個体も見られます。ただし、ブラックとブラウン以外の毛色は基本的に色素欠乏などによる疾患を発症しやすいため注意が必要になります。
また、ドーベルマンはマズルの両頬・眉上・喉・前胸の2カ所・中手・中足・足・大腿と前腕の裏側・尾の下にタン・マーキングがあることが被毛の大きな特徴でもあります。さらにドーベルマンは短毛種で、艶やかな美しい毛質が魅力的です。
ドーベルマンの歴史
ドーベルマンは、19世紀末にドイツでフリードリッヒ・ルイス・ドーベルマンによってジャーマン・シェパード、ジャーマンピンシャー、ロットワイラー、マンチェスター・テリアを交配させて作出された犬種で、繁殖者の名前からドーベルマンという犬種名が付けられました。
ドーベルマンは、つねに収税人として多額の現金を持ち歩いていたドーベルマン氏の警護をすることを目的として作出された犬です。そのため警戒心が強く、護衛能力に優れているため20世紀初頭には正式に警察犬として活躍するようになりました。
ドーベルマンの性格
ドーベルマンは警護犬や警察犬というイメージからとても怖いと思われがちですが、本来は穏やかで落ち着きのある優しい性格といえるでしょう。ただし、ドーベルマンはほかの犬種と比較すると警戒心がとても強く、テリトリー意識が強い面がみられます。
また、ドーベルマンは家族への深い愛情を持っているため家族を守ろうとする意識がとても強く見知らぬ侵入者に対しての警戒心があります。
さらにドーベルマンは賢く訓練しやすい犬種で、飼い主に対する強い忠誠心と服従心があるため飼い主のコマンド(命令)には忠実に従います。
ドーベルマンの平均寿命
ドーベルマンは10歳から13歳が平均的な寿命なので大型犬の一般的な平均寿命とほとんど変わりません。運動をしっかりと行い、ストレスのない生活をすることはドーベルマンが長生きするためのポイントといえるでしょう。
ドーベルマンのとくに注意を要する疾病・疾患は、大型犬に多い股関節形成不全や胃捻転などでしょう。このほか毛色がブルーのドーベルマンは、ブルードーベルマン症候群と呼ばれる脱毛症が発症する可能性が高いといわれているため日頃のお手入れなどでしっかり観察することが大切です。
ドーベルマンは「断耳」や「断尾」をすべき?
ドーベルマンの外観はピンと立った耳と短いしっぽがとくに印象的ですが、生まれたときのドーベルマンはロットワイラーのようなたれ耳で中程度の長さのしっぽがあります。
じつはドーベルマンは、人間が好むドーベルマンの外観を作り出すために生後間もないころに耳の一部としっぽの一部や全部を切断されていました。
近年では動物愛護の観点から欧米諸国では、断耳・断尾の慣習を失くす運動が広まり、日本でもブリーダーからドーベルマンの子犬を購入する際に断耳・断尾するかどうかを選択することができる場合もあります。
「ドーベルマンを飼わないで」と言われている理由はなぜ?
ドーベルマンは、日ごろは大人しく温和な性格でとても甘えん坊の一面を持っている犬ですが、とても警戒心が強くときとして強い攻撃性を示す傾向にあります。ドーベルマンを飼うときは、しっかりと訓練しきちんとコントロールできるだけの信頼関係を飼い主との間に築く必要があります。
ドーベルマンは、とても賢く物覚えがいいので訓練しやすい犬種ですが、飼い主に忠実な気質であるため飼い主のしつけ方に大きく左右されるともいえます。
以上の理由から、ドーベルマンは安易に飼うと訓練が上手くいかず飼い主がコントロールしにくくなり、「飼わないで」と表現されることもあります。
「ドーベルマンを飼わないで」と言われる理由①事故が多い
ドーベルマンは、アメリカン・ピットブル・テリアやロットワイラーなどとともに噛みつき事故の多い犬種といわれています。
ドーベルマンの噛みつき事故でとくに有名なのが俳優夫妻の飼っていたドーベルマンが隣人に噛みついたという事件でしょう。この噛みつき事故では、高級マンションに居住していた俳優夫妻に、隣人が引越ししたことによる管理会社の損失の賠償が裁判所によって命じられています。
ドーベルマンに限らず飼い犬が起こした事故の責任は飼い主にあり、思わぬ事態にならないためにもしっかりと社会性を養い訓練することが大切です。
「ドーベルマンを飼わないで」と言われる理由②特定犬として県や自治体に指定されている場合がある
噛みつき事故を起こしやすい、また噛みつき事故を起こした時に重大な被害がある可能性のある犬を犬種やサイズによって、県や自治体が条例で定めている犬のことを指します。
ドーベルマンは、ロットワイラー、アメリカン・ピットブル・テリア、秋田犬、土佐犬などの大型犬とともに特定犬として県や自治体によって飼育方法や飼育環境が細かく規制されている犬種です。
特定犬とは、噛みつき事故を起こしたときにさまざまな被害がある可能性を持っている犬で、自治体によっては雑種であっても大きさによっては特定犬に指定されることがあります。
ドーベルマンは、特定犬制度を導入している自治体では特定犬に指定されいる犬種であるため、飼育方法や環境に飼い主が十分な注意を払う必要がある犬種です。
「ドーベルマンを飼わないで」と言われる理由③運動量がかなり必要なため
ドーベルマンは、ジャンプしたり走ったりする激しい運動を好む犬種です。ドーベルマンが満足できるまでしっかりと運動をさせることができるだけの時間的なゆとりが必要になります。
ドーベルマンは、運動不足になることでストレスを蓄積し、ストレスを発散させることができない場合は噛みつくなどの事故につながる可能性があります。
毎日の散歩のほかに、ドッグランで思いっきり遊ばせる・飼い主がしっかり遊んであげるなどドーベルマンがストレスを溜めないように配慮する必要があります。
「ドーベルマンを飼わないで」と言われる理由④しつけが難しいため
ドーベルマンは、子犬の頃からしっかりとしたしつけをする必要がある犬種です。ドーベルマンは賢く物覚えが良い犬種で、子犬だけではなく成犬になっても新しいことをよく覚えてくれます。ただ、個体によっては怖がりで縄張り意識が強く攻撃性があるため、ドーベルマンはしつけが難しいといわれることもあります。
基本的なしつけの仕方はドーベルマンもほかの大型犬と同じです。飼い主とドーベルマンとの主従関係をはっきりさせ、ドーベルマンが飼い主のコマンドに忠実に従うようにしつけることが大切です。
「ドーベルマンを飼わないで」という実際の声
ドーベルマンは本来の性格は穏やかな落ち着きのある犬種のはずですが、飼い主との信頼関係をしっかりと築くことができなかった場合飼い主がドーベルマンをコントロールすることが難しくなってしまいます。
噛みつき事故などを起こしてしまったらドーベルマンが悪い犬と思われがちですが、実際はドーベルマンの気質をしっかりと理解できず信頼関係を築くことができなかった飼い主に大きな責任があるといえるでしょう。飼い主はドーベルマンを飼育するときは、責任をもって管理する必要があります。
ドーベルマンを飼うことを避けた方が良い人
ドーベルマンは、大型犬で力も強くしっかりとしたしつけが必要な犬種のため誰でも飼える犬とは言えません。
ここではドーベルマンを飼いたいと思ったときの参考になるようにドーベルマンを飼うことを避けた方が良い人とはどのような人なのかを考えてみましょう。
犬を飼うことがはじめての人
犬を飼うことが初めての人は、そもそも犬の習性や特徴・気質などを十分に理解していない場合が多いといえるでしょう。
ドーベルマンは、犬の中でもとても賢く家族への愛情が深い犬です。飼い主とのしっかりした主従関係を築くことができれば、ドーベルマンをコントロールすることは可能です。
ただ、犬を飼うことがはじめての人は、犬種の特性や気質を十分に理解しておらずイメージだけでドーベルマンを選ぶ可能性があり、十分なしつけができないことがあります。
賃貸物件に住んでいる人
賃貸物件では、ペットの飼育を禁止している場合や「小型犬まで」などのルールがある可能性があります。ドーベルマンは大型犬のため、飼育するためにはかなり広いスペースが必要になります。
また、引越しするための物件探しも大型犬を飼育できる物件が少なく、不動産会社から「トイレのしつけ」「無駄吠えをしない」「散歩マナーを守っているか」などを確認されることがあります。さらに、大型犬OKの物件でもドーベルマンということで断られる場合もあります。
高齢の人・足腰に自信のない人
ドーベルマンは走ったり遊んだりすることがとても好きなので、飼い主と一緒におもちゃやボールなどで遊ぶことを喜ぶ犬種です。ドーベルマンと一緒に遊ぶことができるように飼い主はアクティブで体力があることが必要になります。
高齢の人や足腰に自信がない人は、ドーベルマンと一緒に走ったり遊ぶことが難しいため、ドーベルマンが十分に運動することができずストレスを溜めてしまう環境になりやすいといえるでしょう。飼い主が健康で体力がないとドーベルマンと楽しく生活することは難しいかもしれません。。
お散歩の時間を確保できない人
毎日朝夕の2回、1回の散歩時間は約30分から1時間程度
ドーベルマンは、とても運動量が多く長時間の散歩が必要な犬種です。ドーベルマンのお散歩は、毎日朝夕2回、少なくとも30分から1時間程度の散歩が必要になります。ドーベルマンを飼育するときは、十分に散歩の時間を取ることができるかどうかを考える必要があります。
また、ドーベルマンは、ただ歩くだけでは満足する犬種ではなく、走ったりジャンプすることができる時間が必要になります。時々ドッグランに連れていく・人のいない場所でロングリードで走らせるなどができない人はドーベルマンを飼育することは難しいでしょう。
しつけの時間が十分に確保できない人
ドーベルマンは、飼い主にとても従順で忠実な犬種ですので、しつけや訓練によって飼い主との絆や信頼関係を築くことに喜びを感じます。
ドーベルマンを飼育するときは、愛犬と一緒にしつけや訓練をすることができる時間を十分にとることができるかを考えてみましょう。
ドーベルマンは、飼い主との絆と信頼関係を築くことで問題行動を起こす可能性が低くなるといわれているため、しつけや訓練する時間を十分に確保できない人は、ドーベルマンの飼育は向いていないといえます。
経済的に余裕のない人
ドーベルマンにかかわらず、犬を飼うということは経済的に大きな負担となります。とくに大型犬の場合は、毎月かかる餌代やペットシーツ代などは小型犬よりも多くなります。
このほか、ワクチン代・狂犬病の予防注射・ノミ・マダニの駆除剤・トリミング代・フィラリア予防薬など不定期の支出があります。
また、病気になったときの診療費も小型犬よりも使う薬の量などが多くなるために、割高になるといえるでしょう。ドーベルマンを飼いたいと考えたときには、ドーベルマンを飼育するだけの経済的余裕があるのかを考えてみましょう。
ドーベルマンを飼う時に気をつけること
- 脱走対策は万全に行いましょう
- 小型犬や子どもと同じ環境で生活する場合は、目を離さないようにしましょう
- 適温、適湿な飼育環境を整えましょう
- こまめにお手入れしましょう
- しつけに悩んだらプロのトレーナーに相談しましょう
犬を飼うことになれている人でもドーベルマンを飼うときには気をつけたいことがあります。
ドーベルマンを飼うときに気をつけたい脱走対策・飼育環境、毎日のお手入れ、しつけなどについて考えてみましょう。
脱走対策は万全に行いましょう
ドーベルマンは、脱走すると怖がりで警戒心の強い気質のため突発的に攻撃的になってしまう可能性がある犬種です。
特にドーベルマンを特定犬に指定している県や自治体では、ドーベルマンの飼育場所・飼育環境に関して細かくルールが決められているため、各自治体のルールに従って飼育しましょう。
また、特定犬制度を導入していない地域でドーベルマンを飼育する場合は、ドーベルマンが飼育場所から脱走しないように鉄柵などを使って脱走対策を万全に行う必要があります。
小型犬や子どもと同じ環境で生活する場合は、目を離さないようにしましょう
ドーベルマンは、日ごろは大人しく穏やかな性格ですが、何かのきっかけで突発的に攻撃的になってしまうことがあります。ドーベルマンが攻撃的になったときに、ドーベルマンをしっかりとコントロールできる人が近くにいない場合、大きな事故になってしまう可能性があります。
とくに小型犬や小さな子どもは、ドーベルマンに噛まれると大変なことになってしまう可能性があります。慣れているからと安心することなくドーベルマンと同じ環境で生活するときは、ドーベルマンをコントロールできる人が必ずそばについておくようにしましょう。
適温、適湿な飼育環境を整えましょう
ドーベルマンは、シングルコートの犬です。そのため、温度変化や湿度にはとても敏感な犬種といえるでしょう。
ドーベルマンの原産国はドイツのため、日本のような高温・多湿の環境は苦手と考えられます。ドーベルマンが健康に過ごすことができるように室外での飼育はさけ、室内で飼育することをおすすめします。
ドーベルマンの居住場所は室温を20度から25度にし、湿度は50%から60%に保つようにしましょう。また、ドーベルマンは室温が低い場合でも湿度が高いと熱中症になる可能性があるため注意が必要です。
こまめにお手入れしましょう
ドーベルマンはシングルコートの犬ですが、短い被毛のため生え変わりのサイクルが短い犬種です。
一般的にシングルコートの犬は、ダブルコートの犬よりも抜け毛が少ないといわれていますが、ドーベルマンは短毛のため生え変わりサイクルが短いことで抜け毛が多くなってしまいます。
そのためドーベルマンの被毛のお手入れは1週間に1回程度、ラバーブラシや獣毛ブラシでブラッシングをする・毎月1・2回のシャンプーをするといいでしょう。
しつけに悩んだらプロのトレーナーに相談しましょう
ドーベルマンは、賢く物覚えのよい犬種ですが、その反面賢いためにしつけが入りにくいことがあります。ドーベルマンと穏やかかな暮らしをするためには、しっかりとしたしつけが不可欠です。
もし、飼い主だけでのしつけが難しく、ドーベルマンのしつけに悩んだときは迷わずプロのトレーナーに相談し、力を借りることが大切です。
ドーベルマンはしっかりとしつけることが犬にとっても飼い主にとっても重要なので、ドーベルマンのためにもプロのトレーナーを頼ってみましょう。
安易な気持ちでドーベルマンは飼わないようにしましょう
ドーベルマンは、小型犬のようにかわいいやかっこいいというイメージだけの安易な気持ちで飼うことができない犬種です。
ドーベルマンを迎えたいと考えたときは、ドーベルマンの気質や特性をしっかり調べて理解し、自分がドーベルマンを飼育できるか・飼育環境は整っているかを考えてみることが大切です。
ドーベルマンと飼い主がしっかりと信頼関係を築き、確かなきずなで結ばれることができればドーベルマンは最良のパートナーとなるでしょう。
犬が生まれて間もない時期に、犬の耳の一部や尻尾の一部もしくは全部を手術で切断することを言います。