老犬がご飯を食べない時の対策7つ|危険なサインや注意点を獣医師が解説

老犬 食べない

愛犬がご飯を食べなくなると、飼い主さんは心配で気が気ではないですよね。

しかし、愛犬が高齢の場合には、病気などではなく老化による食欲不振かもしれません。

犬の老化でみられるサインや、老犬がご飯を食べない場合の理由、原因となる病気、老犬がご飯を食べない時は無理にあげない方がよいのかについて解説します。

また、犬がご飯を食べない場合の対処法、ご飯を食べない老犬にオススメなフード、オススメのトッピング食材、老犬のご飯を手作りする時の注意点についても紹介しますので、是非参考にしてくださいね。

西岡優子(にしおか ゆうこ)獣医師
北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。

犬の老化で表れるサインは?

愛犬が歳をとって、寝る時間が増えたり、おしっこなどの排泄を失敗するようになると、飼い主さんは「病気かも?」と心配になりますよね?

犬は老化すると以下のようなサインがあらわれます。過度に心配しないためにも、是非知っておきましょう。

老化であらわれるサイン
  • 白髪が生える、毛が薄くなる
  • 目が白く濁る
  • 元気さがなくなり、疲れやすくなる
  • ずっと寝ている
  • 食欲の減退
  • 筋力の低下
  • 関節炎や関節の傷み
  • 便秘や尿失禁など排泄に関するトラブル

こういった症状は老化だけでなく、他の病気でもみられるため、気になる場合はかかりつけ動物病院の獣医師さんに相談しましょう。

老犬がご飯を食べない原因

老犬がご飯を食べない原因
考えられる原因
  • 老化による体や性格の変化
  • 病気になった、あるいは病気が進行した
  • ストレス
  • 痴呆

犬が年齢を重ねると老化によって様々な体の変化が起きたり、腎臓疾患などの病気になりご飯を食べなくなることがあります。

老犬がご飯を食べなくなると、「老化が原因かな?」と思ってしまいますが、それ以外にも様々な可能性があるので注意が必要です。

例えば、老犬になると筋力の低下でご飯が飲み込みづらくなったり代謝の低下により食欲が落ちたり嗅覚や視覚が衰えて目の前に出されたご飯への食い付きが悪くなることがあります。

また、筋肉量の減少による足腰の筋力の低下や、関節など体の節々の痛みから、ご飯を食べる体勢を維持することが難しくなったりご飯を食べに行くという行動そのものに老犬は消極的になるのです。このような症状は老化に限らず、脳梗塞や脳炎、前庭疾患、椎間板ヘルニアなどの老犬に多い病気でもみられることがあります。

さらに、老犬になると、歯のぐらつきや歯周病など、口内環境の悪化により痛みを感じてご飯を口にしなくなる場合もあるのです。

老犬が痴呆になったりストレスを感じる場合も食べることへの興味が薄れたり、ご飯の選り好みをするようになり、ご飯を食べなくなることがあります。

老犬がご飯を食べない場合の対策方法

老犬がご飯を食べない場合の対策方法

愛犬が歳を重ねて、ご飯を食べなくなった場合には、ご飯自体に工夫を加えたり、食べる環境を整えたり、食べさせ方を工夫してあげましょう

ここでは、老犬がご飯を食べない場合の対策について紹介しますので、是非参考にしてください。

対策①ご飯を温める

ご飯の香りを強くすると食欲が増し、食べるようになる場合があります。

ドライフードにぬるま湯や犬用の牛乳を入れふやかして香りを出したり、ドライフードからより香りのあるウェットフードに切り替えたり、ウェイトフードを電子レンジで人肌程度に温めて香りを出すなど工夫してみましょう。

対策②ご飯をふやかす

ドライフードをぬるま湯や犬用の牛乳でふやかすと、ご飯が飲み込みやすくなり食べてくれるようになる場合があります。この方法は食欲増進に繋がるだけでなく、ご飯と一緒に水分も摂れるので効率的です。

犬によって好きなふやかし度合いが違うため、愛犬の食い付き具合をみながら調整してあげましょう。

対策③サイズを小さくする

対策③サイズを小さくする

前述したように、老犬では筋肉の低下によってご飯が飲み込みづらくなったり、口内環境の悪化からご飯を口にすると痛みを感じる場合があります。

そのような時には、ご飯をミキサーやフードプロセッサーなどで細かくして与えてみるのもオススメです。

対策④好きな食べ物を混ぜる

老犬が痴呆になったりストレスから、食べることへの興味が薄れたり、ご飯の選り好みをするようになり、ご飯を食べなくなる場合があります。

そういった場合には、フードの上に愛犬の好きな物をトッピングしたり、混ぜてあげるようにしましょう。

対策⑤ ご飯をペースト状や流動食にする

①〜④の工夫をしてもご飯を食べない場合には、ペーストタイプのウェットフードや、柔らかさを調節できる粉末タイプのフード、水分やカロリーを多く含む犬用のゼリー、手作りの流動食を与えてみましょう。

肉や野菜で作ったスープや、犬用の牛乳などにゼラチンを加えると、簡単に流動食を作ることができるのでオススメです。

対策⑥ 食事環境を整える

老犬で体に痛みやこわばりがある場合は、ご飯を食べる時に床にある食器まで首を下げる姿勢をとることが難しいので、食器を犬の高さに合わせるなどの対策をしてあげるようにしましょう。

また、老化や脳梗塞などの病気で体が上手く使えない犬では、ご飯を食べる際に上半身を起こしてあげたり、クッションや丸めた毛布などを利用して姿勢を保持するなどの対策がオススメです。

対策⑦ ご飯の食べさせ方を工夫する

対策⑦ ご飯の食べさせ方を工夫する

食器からご飯を食べない老犬が、飼い主さんの手からであれば食べるということがあります。ですので、まずは手を使ってご飯をあげてみましょう

それでも食べない場合には、シリンジなどを使って強制給餌を行ってください。強制給餌にはシリンジを使う方法以外に、ペーストのフードを上顎にぬったり、缶詰などのペースト状態のご飯を喉につまらない大きさのお団子にして舌の奥に乗せるなどの方法があるので、愛犬に合った方法を探してみましょう

強制給餌する時には、飲み込んだ物が食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を起こさないよう注意が必要です。常に愛犬の様子を確認しながら、ご飯の量、食べさせるペースなどを調整して行いましょう。

老犬がご飯を食べない場合、病気の可能性も

老犬がご飯を食べない場合、病気の可能性も

老犬がご飯を食べなくなると、「老化が原因かな?」と思ってしまいますが、病気が隠れていたり、病気が進行している可能性があるので注意が必要です。

考えられる病気
  • 腎臓疾患
  • 肝臓疾患
  • 口腔内の疾患
  • 脳・神経疾患
  • 腫瘍
  • 感染症による敗血症

腎臓疾患

腎臓疾患が進行して腎臓の機能が低下すると、尿から排出されるはずの老廃物や毒素が犬の体内に蓄積されるのです。

このような状態を「尿毒症」といい、毒素が影響して吐き気や消化器症状を起こすため、犬は不快感を感じてご飯を食べなくなることがあります。

肝臓疾患

肝臓の機能低下や門脈体循環シャントといった肝臓病の進行も、犬がご飯を口にしなくなる原因の一つです。これら肝臓疾患が進行すると、肝臓で本来解毒されるはずのアンモニアなどが全身を循環してしまう「肝性脳症」という状態になり、尿毒症同様、犬がご飯も食べなくなる場合があります。

口腔内の疾患

老犬では、歯のぐらつきや歯周病など口内環境が悪化し、ご飯や水を口に入れると痛みが出るため、食事を嫌がる場合もあります。

脳・神経疾患

脳・神経疾患

犬が脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの脳疾患から痴呆になったり、これらの病気により体が思うように動かなくなりストレスを感じると、食べることへの興味が薄れたり、ご飯を選り好みするようになる場合があります。

また、椎間板ヘルニアのように神経が圧迫され、体のどこかに強い痛みがある場合には、痛みで食欲がわかなかったり、首を下げるなどのご飯を食べる体勢を維持することが難しくなり、食べることに消極的になるのです。

腫瘍

悪性腫瘍が進行すると、周りの正常な細胞の活動や栄養の摂取がさまたげられて、体が衰弱していき、ご飯も水も口にしなようになります。これは「悪液質(あくえきしつ)」といわれる末期の状態です。

感染症による敗血症

敗血症とは体内で細菌、真菌、ウイルスなどが増殖して炎症が全身に広がり、臓器への障害が起きている重篤な状態です。子宮蓄膿症や肺炎、尿路感染症などの感染症に伴い発生し、発熱、食欲不振、嘔吐、元気消失、呼吸速迫などの症状がみられます。

老犬がご飯を食べない場合は無理に食べさせたほうが良いの?

老犬がご飯を食べない場合は無理に食べさせたほうが良いの?

どうしても愛犬がご飯を食べない場合には、強制給餌をするしかありません。

しかし、強制給餌は愛犬の嫌がることをしなければならないので、飼い主さんが辛いと感じてしまうことがよくあります。そして、無理に余命をしているようで、人間のエゴではないかと考える飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

水分補給はしっかり行う

愛犬に強制給餌によるストレスを与えたくないと考える飼い主さんは、ご家族やかかりつけの動物病院の獣医師さんとしっかり相談した上で、愛犬が水分だけはしっかりとれるよう、通院して点滴をしてもらったり、自宅でシリンジやスポイトで水や犬用の牛乳、犬用の経口補水液などを口に含んであげるなどの対策を検討しましょう。

もし、愛犬が水を飲み込む仕草をしない場合には、ガーゼなどに水分を含ませ、口の周りを優しく濡らすといった方法も試してみてください。

老犬がご飯を食べない場合のおすすめフード

ここでは、老犬にオススメのフードをいくつか紹介していきます。

愛犬ちゃんがご飯を食べない時には、これらのフードを是非試してみてください。

老犬おすすめフード①ブッチ

ブッチ
おすすめポイント

生肉に近い水分量のフードで、非常に食い付きが良く、ドライフードを食べなくなってしまった老犬のご飯やトッピングにオススメです。

ブッチのフードは、原材料の多くを肉類が占め、生肉に近い水分量を保つように作られているため嗜好性が良く、野菜や海藻などの食材もバランスよく使われた嗜好性抜群のフードです。フードの質感は、人用の魚肉ソーセージをイメージしてください。フードには上質な材料を使用しており、人工添加物一切不使用、犬が消化しづらい穀物を使用しないグレインフリー(穀物不使用)にもこだわっています。

また、EPA、DHAの元となるオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸を摂れるよう、サバやマグロも配合しています。

ブッチ 口コミ

老犬おすすめフード②モグワン

モグワン
おすすめポイント

健やかな身体環境を維持するEPAやDHAの元となるオメガ3脂肪酸や、若々しさを保つ効果が期待されるココナッツオイル、海藻やハーブなどといった、老犬に嬉しい成分が沢山含まれたドライフードです。

モグワンは、上質な食材を使用しており、タンパク質の源であるチキン生肉や生サーモン、野菜、フルーツなどが豊富に使われた高タンパクで栄養バランスのよいドライフードです。

人工添加物不使用で、穀物を一切使用しないグレインフリーにもこだわって作られています。

また、健やかな身体環境を維持するEPAやDHAの元となるオメガ3脂肪酸や、若々しさを保つ効果が期待されるココナッツオイル、海藻やハーブなどといった老犬にも嬉しい成分が沢山含まれたフードです。

モグワン

老犬おすすめフード③カナガンウェットフード

カナガンウェット
おすすめポイント

缶詰タイプのフードで嗜好性が高く、ドライフードを食べたがらない老犬にオススメです。

カナガンは消化に良い上質な平飼いチキンを使用し、野菜や果物も豊富に使われている缶詰タイプの高タンパクで栄養のバランスのとれたフードです。

オメガ3脂肪酸で注目のサーモンオイルや、老犬におすすめな補助成分が豊富な緑イ貝も使用されています。

人工添加物不使用、グルテンフリーにも配慮された、嗜好性が高いウエットフードです。

カナガン

老犬が喜ぶ手作りご飯〜おすすめ食材〜

老犬が喜ぶ手作りご飯〜おすすめ食材〜

手作りのご飯は、ドッグフードよりも安心安全でヘルシーなイメージがありますが、栄養のバランスをとるのがなかなか難しく、逆に栄養が偏るなど愛犬の健康を脅かす場合もあります。

ですので、ここでは栄養バランスのとれた既存のフードに食欲をそそるためのトッピングに使えるオススメ食材を紹介します。

タンパク質

老犬になると筋肉量が低下するため、筋肉量や健康維持のために良質なタンパク質を摂る必要があります。ササミやむね肉はタンパク質が豊富で、脂肪分が少ないので老犬にはオススメです。

おすすめ食材

鶏肉(ササミ・むね肉)、豚肉、鹿肉、羊肉、魚(サバ、イワシ、タラ、鮭など)

抗酸化作用のある食材

体内に取り込まれた酸素のうち、数%が変化して活性酸素という物質になります。この活性酸素の働きを阻害する作用が抗酸化作用です。

活性酸素は動脈硬化や癌、老化などの原因となるため、ポリフェノール、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンEといった抗酸化作用物質を含む食材を摂るようにしましょう。

おすすめ食材

緑黄色野菜(トマト、ブロッコリー、ニンジンなど)、オイル(オリーブオイルやアマニ油など)、魚(サケやイワシなど)、種実類(ゴマなど)

整腸作用のある食材

水溶性食物繊維は腸の善玉菌のエサとなるため、腸内の善玉菌が増え、腸内環境を整えるために有効です。一方、不溶性食物繊維には、腸の運動を活発にして便通を良くする働きがあります。オリゴ糖も腸内細菌にとってごちそうであり、食物繊維と同様、腸内環境をサポートしてくれます。

おすすめ食材

水溶性食物繊維を多く含む食材(リンゴ、キウイ、イチゴ、わかめ、アボカド、ニンジン、大根)、不溶性食物繊維を多く含む食材(玄米、おから、タケノコ、レンコン、さつまいも、きのこ)、オリゴ糖を多く含む食材(大豆、ゴボウ、バナナ)

オメガ3脂肪酸が含まれる食材

オメガ3脂肪酸は、犬の体内で合成できない必須脂肪酸の一つです。

オメガ3脂肪酸を含む食材を摂取すると、オメガ3脂肪酸に含まれるα-リノレン酸がEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に体内で変換されます。

EPAやDHAは健康維持効果があり、老犬の痴呆症状の改善にも期待されている成分です。

おすすめ食材

サーモン、マグロ、マス、ムール貝、アブラナ油、えごま油などの植物油

老犬のご飯を手作りする際の注意点

老犬のご飯を手作りする際の注意点

老犬の年齢を配慮せず、一般犬向けのレシピで手作りご飯を与えていると、肥満や消化不良による下痢などを起こす場合があります。これは、老化により代謝や消化機能の低下や、運動量や筋肉量の減少が起こるためです。

ここでは、老犬のご飯を手作りする際の注意点について解説していきます。

注意点①アレルギー

手作りご飯を作る際には、食べ物のアレルギーに気をつけることが大切です。愛犬に食物アレルギーがあり、アレルギーの原因がわかっていれば、その食材は使用しないようにしましょう。

愛犬に食物アレルギーはないと思っていたのに、実際は食物アレルギーがあったという場合はとても多いです。ご飯を食べた後に、口の周りを痒がる仕草や、目の周りを痒がる仕草、全身を痒がる様子が愛犬にみられたら食物アレルギーの可能性があるので注意しましょう。

注意点②栄養価

老犬の1日の必要エネルギー量は、若い頃に必要なカロリー量の7~8割が目安となります。老化による運動量の低下や、代謝の低下により、若い頃と同じ量ではカロリーオーバーとなり肥満になりやすくなるので気を付けましょう。

老犬では筋肉量を維持するために、高タンパクなご飯がオススメです。また、歳を重ねると消化機能が低下してくるので、消化不良にならないように低脂肪で消化の良いご飯にしてあげましょう。

注意点③犬に与えてはいけない食材

玉ねぎ・にんにく・ねぎ・ニラ・らっきょう等のネギ類、春菊などの菊類、アボカド、カニ、エビ、イカ、するめ、ぶどう、いちじく、ナッツ類、ドライフルーツ、こんにゃく、チョコレート、コンソメ(玉ねぎが含まれている)、スパイスなどの香辛料、キシトールなどの甘味料、アルコールの含まれるもの、カフェインの含まれるものは、犬には絶対与えないよう気を付けましょう。

また、きのこ、たけのこ、タコなど魚以外の魚介類は、犬にとって消化しづらい食材ですので、老犬に与えるには注意が必要です。

【まとめ】老犬がどうしてもご飯を食べない場合は獣医師に相談を

老犬がご飯を食べない理由や、原因となる病気を解説しましたが、飼い主さんが食欲不振の原因を見つけるのはかなり難しいと思います。

原因がわからないまま、ご飯を食べない状態が何日も続くと、犬の体重が徐々に減り、痩せて活動量が減少します。さらには、うんちやおしっこの排泄量が少なくなったり、意識がもうろうとしたりなど重篤な状態になることもあるのです。

ですので、愛犬がどうしてもご飯を食べない場合には、動物病院の獣医師に相談し、検査をきちんとして診断をうけ、適切な治療をすることが大切です。